2014/07/31

木になる紙

「気になりますか? 木になる紙。よかったらサンプルお持ちください」

国際展示場で開かれた“エコ”製品の展示会で、熱いおじさんにパンフレットを差し出された。水に溶かれた灰色と白のパルプを示しながら、どちらかが間伐材から作ったパルプで、もう一方が古紙パルプで、混ぜるとこんな色の紙になる、と説明されたような記憶がある。

その展示会には、もちろんほんものの製品もたくさんあったが、環境破壊や戦争に加担している企業も参加していて、“エコ”とは名ばかりの製品もたくさんあったので用心深くなっていて、そのときは内心(オヤジギャグかよ)と冷たくあしらってしまった。エコペーパーなんて言ったってまがいものもたくさんある。

あとになってその「木になる紙」のことを思い出し、よく調べてみたら、森の木をつくる紙という意味で「木になる紙」と名付けられているのだとわかった。古紙70%に日本国内の間伐材から作ったパルプが30%で作られていて、間伐の作業をしてくれる人にきちんとお金が入る仕組みになっていた。

最近、自宅で使う印刷用紙を探していたら、展示会で聞いたときは九州産という広い範囲のものしかなかったが、もっと範囲が狭く、顔の見えやすい関係でできていそうな、びわ湖の森の木になる紙というのができていた。運営しているのは、びわ湖の森を守る活動をしているkikitoという滋賀県の協議会だ。紙をよく見ると、古紙が混ざってできた微小な点のようなものが見えるが、漂白をしまくって水を汚すような作られ方をするエコペーパーもどきよりずっといいと思った。


放置された森は荒廃していく一方だが、間伐などの手入れをすれば森は生き返る。生き返った本来の森は、人間に燃料や原料としての木材を提供してくれるだけでなく、保水力を保って土砂崩れなどの災害も防止し、おいしい水を涵養し、動植物のすみかとなって憩いの場を提供すらしてくれる。間伐材を有効活用し、手入れをしてくれる人々にも生活の保障ができるようになれば、継続して森の手入れができ、森を守っていくことができる。

熱帯雨林を破壊して、原住民を暴力的に追い出して、作られているコピー用紙も多い(コチラをご参照)。森を破壊する紙と、森を作る紙がある今、私は森を作る紙を選びたい。